これから副業を始めたいと思っている方の中には
副業している人はインボイス登録した方がいいの?していいの?
という悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、副業を始めるにあたって知っておくべき「インボイス制度」と副業の関係性について紹介していきます。
「いやちょっと今時間ないから答えだけ知りたい!」という方の為に結論を先に書くと…
- インボイス登録をしても副業がバレることは”ほぼ”ない。
- デメリットはあるけど副業プレイヤーでもインボイス登録はしておいた方が良い(提供する商品やサービスが唯一無二のものである場合を除く)
「理由が気になる!」or 「それどういうこと??」 という方は、記事本文へ
できるだけわかりやすく、「知っててよかった!」という情報をお伝えします。
まずはうっすらとだけ理解している方が多いであろう「インボイス制度」とはなにか、から簡単にご説明します!
この記事の信頼性
10年以上いろいろなビジネスの財務コンサルタントをしてきた経験から、様々なビジネスの「仕組み」について解説します
インボイス(適格請求書)制度とは
インボイス制度とは、普段の業務を行う上で取引先とやり取りする請求書の書式を、インボイス制度に倣った以下のような書式(適格請求書等)に変更にすることです。
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 税率ごとに区分して合計した対価の適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
具体的にはこんな感じだよ
元から税率ごとに請求額が分けられている請求書(区分記載請求書等)なら、登録番号を追記するだけでインボイスにできるね
インボイス制度にとって重要な登録番号は、法人であれば「T+13桁の法人番号」、個人事業主であれば「T+13桁の数字」となっています。
当然ですが、事業主ごとの登録番号はいずれも重複しません。
また、⑤の「税率ごとに区分した消費税額等」ですが、自社の売上が10%のものしかない場合、「8%対象 0円」というような記述は省略することができます。
インボイス制度導入の目的
インボイス制度導入の目的は以下の二つです。
- 複数税率(8%~10%)の中で取引の正確な消費税額と消費税率を把握すること
- 益税をなくすこと
複数税率への対応
複数税率下における消費税額と消費税率の把握という点において、インボイスの導入は合理的ではあります。
インボイスの書式おいては「適用税率」と「税率ごとに区分した消費税額」が記載事項として設けられており、請求書上で8%と10%の税額が混在する事のない仕組みになっているからです。
もちろん元から区分されている請求書は普通に存在してたけど。
元から取引が税率ごとに記載されている請求書については、基本的には登録番号を付記するだけでインボイス対応可能です。
そもそも正確に8%と10%を把握する必要ある??
益税をなくす
年間課税売上高が1000万円以下の事業者は、免税事業者として消費税の納付義務はありませんでした。
つまり顧客から預かった消費税は手元に残っていましたが、これが「益税」と呼ばれるものです。
インボイスは消費税の課税事業者でなければ発行できない為、制度開始により結果的に免税事業者が減り、これまで免税事業者が受け取っていた益税が減少します。
これが本命か。
めったなことを言うものじゃあないよ。
インボイス制度の書式にすると何がどう変わる?
あなたが発行する請求書がインボイスかどうかで、取引先が納める消費税の計算が変わります。
具体的にどう変わるかと言えば、
- あなたがインボイスを発行できる場合は取引先の消費税はこれまでと変わらず、
- 発行できない場合は取引先が納める消費税が増える可能性があります。
どういうこと?
消費税の計算方法が関係しているよ
消費税の計算は、ざっくり言うと「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引いた金額を納める形になっています。
あなたがインボイス登録するかどうかで変わるのは「あなたの売上の消費税」、つまり取引先にとっては「支払った消費税」に関わる部分です。
あなたがインボイスを発行できない場合、仮に取引先があなたに消費税込みの代金を支払っていても、「消費税を支払っていない」という判定をされることになります。
この場合、あなたの請求書に「税込」や「消費税10%」などと記載があっても関係ありません。
「税込」って請求書に書いてあるから消費税分も含めて料金を払ったのに消費税を払ってないことになる!?
あなたがインボイス登録をしなかった場合の取引先の消費税計算
これまで:税込11,000円の取引に対して、取引先は1,000円分「支払った消費税」として消費税計算ができた
これから:税込11,000円の取引に対して、取引先は「支払った消費税なし」で消費税計算をしなければならない
取引先は「10,000円の本体料金+1,000円の税」じゃなく、「11,000円の本体料金」を払ったって認識されるってことだね
また反対に、取引先がインボイス登録するかどうかはあなたの「支払った消費税」に影響します。
どちらにしても「預かった消費税」には影響しないんだね
インボイス登録を行わないとどういうことが起きる?
上記を踏まえて、あなたがインボイスの登録を行わない場合、以下のような状況が起きる可能性があります。
- 消費税を余計に支払うことになるので、取引を停止する
- 消費税を余計に支払うことになるので、値下げ交渉をする
- 取引先からインボイス登録を行うよう求められる
取引先からすると、インボイス登録を行っている事業者と行っていない事業者、同じ仕事を頼むならどちらに仕事を頼みたいかは一目瞭然でしょう。
一応、独占禁止法もしくは下請法により強制的な値下げ勧告などは禁止されていますが、「両者が合意の上で契約金額を変更した」となるとこちらの制限は機能しないことになります。
おそらくだけど、大企業はこの独占禁止法等はきちんと守ると思う
逆に言うと、発注側が中小企業の場合は値下げ交渉が起きる可能性があるってことか…
インボイス登録をすることで何が起きる?
じゃあ今すぐぼくもインボイス登録しよう
ただし、インボイス登録することによりデメリットも生じます。
それは、インボイス登録を行うことはイコール「消費税の課税事業者になる」ことです。
インボイスと「消費税の課税事業者」
消費税の課税事業者とは、その名の通り「消費税が課税される事業者」です。
反対に、消費税が課税されない事業者を「免税事業者」と言います。
課税事業者と免税事業者の違いをかなりざっくり説明すると、「年間売上高が1000万円を超えているかどうか」です。
年間1000万円を超える売上がある事業者は消費税を納めてください。1000万円以下の事業者は消費税を免税にします。
これが今までのルールでした。
しかしインボイス制度の導入後はこうなります。
年間の売上高に関わらず、インボイス登録事業者は消費税の課税事業者になります。
これまで払う必要のなかった消費税を払う必要があるってこと?
もちろん最初から消費税の課税事業者であった場合は納める税額が増えるということはないよ
インボイス登録のメリットとデメリットを表にまとめました。
免税事業者 | 課税事業者 | |
メリット | これまで通り取引が可能 | なし |
デメリット | 消費税の支払い義務が発生 | 事務負担が増える |
課税事業者にもなんもメリットないんか
結論、すべての事業者にとってメリットのない制度だから…
インボイスに関する「経過措置」:2割特例
ここまでのお話はインボイスの基本的な考え方に基づいての内容でした。
ただし、期間限定でインボイス制度に関する経過措置が採られることも発表されています。
大まかな内容は以下の通りです。
令和8年9月までは経過措置として、インボイス未登録業者からの仕入についても、課税取引であれば仕入税額相当額の80%を課税仕入として消費税計算が可能。
うーんと、さっきの税込11,000円の取引の例で言うと…?
1,000円を「支払った消費税」にはできないけど、800円ならできるってことだね
また、2割特例は自身がインボイス登録を機に免税事業者から課税事業者になった場合にも適用可能で、その場合は売上税額の2割だけを納付すればよいことになります。
たとえば、君の事業の売上が100万円(税額10万円の場合)なら、消費税の納税額は「10万円×20%=2万円」になるよ
1000万円だと20万か…
ただし、上記の特例を受けられるのはインボイス制度以前は免税事業者だった事業者が新たにインボイス登録と共に課税事業者になった場合のみです。
副業プレイヤーは一部例外を除いてインボイス登録を行うべき
では、実際のところ副業プレイヤーはインボイス登録を行うべきかという点について。
個人的な意見ではありますが、副業プレイヤーでも基本的にはインボイス登録はした方がよいと私は思います。
少なくとも、インボイス制度が撤廃されない限り、いつかは登録せざるを得ない状況になるのではないかと考えます。
理由は以下。
- 取引先との取引が中止となるリスクがある
- 経過措置期間は売上税額の2割だけの消費税納付で済む
- インボイス未登録者への信頼性の低下の可能性
取引先との取引が中止となるリスクがある
取引先視点では、あなたがインボイス未登録の場合、2割特例があったとしても税金計算上、不利は不利です。
例えば11,000円の例では200円しか差がありませんが、550,000円の取引ならば10,000円の差です。
数回の取引が積み重なれば簡単には無視できない金額になるでしょう。
実際に、東京商工リサーチの調べでは「インボイス未登録業者との取引継続について、約45%の事業者が改めて検討する、何らかの見直しを行う可能性がある」という調査結果が出ています。
これ実際のところ、僕のクライアントでも結構な頻度で代替の業者探しが現在進行形で行われてる…
インボイスはとりあえず様子見でいいってインターネットで見たのに…
例外としては、あなたが提供できる商品やサービスの代替が他の事業者ではできない時。
この場合は取引先はあなたに依頼する以外選択肢がないので、インボイス未対応でも問題なさそうです。
経過措置期間は売上税額の2割だけの消費税納付で済む
インボイス登録=消費税の納税義務が発生するのは大きなデメリットです。
しかし前述の通り、経過措置期間においては、あなたが納める消費税額は売上税額の2割のみです。
もちろんこれまで払う必要のなかった益税の内、いくらかは支払う必要があるので手残りは少なくなりますが、少なくとも経過措置期間はロスは少ないと言えるでしょう。
相手先の要望が値下げなら納付する消費税額とどっちが高いか、など検討も可能ですが、取引停止だった場合は売上が0になるということなので、売上税額の2割の消費税納付とは影響が比較にならないでしょう。
しつこいけど、売り上げの2割じゃないからね
1000万円なら20万ね…まあでも安くはない…
インボイス未登録者への信頼性の低下の可能性
インボイス制度の開始と同時にこういった事態になる可能性は低いと思いますが、制度が進むにつれて
「インボイス登録をしている」ことが社会的な信用を示すという流れになる可能性も0ではありません。
その場合は、インボイスを登録していない事業者は登録を求められる、消費税分値下げを迫られる、取引の解消、というケースは十分あり得るでしょう。
もしみんなが登録しているという風潮になったとしたら、「一人だけ得をしようとしている
」というのが波風立てるケースもあるからねえ…人生難しすぎるだろ。
登録するかしないかに絶対の正解というものはもちろんありませんが、
インボイス登録についてはメリット、デメリットどちらもあるが、どちらかと言えば登録した方がダメージが少ない。
というのが私の結論です。
ただし、すべての事業者が必ず登録しなければいけないという訳ではありません、一部例外があります。
それは、事業の内容から考えてほとんどの顧客がインボイスを必要としない場合です。
インボイス登録をしなくてもよい事業者
インボイス登録をしなくてもよい可能性が高い業種とは、「顧客が一般の消費者である業種」です。
例えば…
- 飲食店
- 商店
- 美容室
- 不動産賃貸業
- 個人投資家
これらの業種は、お客さんが事業者ではないので、そもそも消費税課税とは無関係であるケースがほとんどです。
会社からもらう給料には消費税が課されていないので、あらためて消費税を税務署に納付するという手続きが必要ありません。
つまりあなたがインボイスを出していようがいまいがお客さんはもともと消費税納付を行わないので、なんの影響もないということです。
ただ、はっきり言って副業に向いている業種は多くないね…
投資なら必要なさそうだけど…
インボイス登録をしておくべき事業者
インボイス登録をしておくべき事業者は、上記の「しなくてもよい業種」以外の事業者。
例えば、ネットショップなどの物販やアフィリエイト、クラウドソーシングなどの業務委託契約に基づいた副業はほぼ全てこちらに該当します。
このサイトで紹介している副業の大半…
そして、既に年間売上高が1000万円を超え、課税事業者となっている事業者の方は登録しておくべきでしょう。
既に課税事業者になっている人にとっては税務的なデメリットはないからね
つまり、飲食店であろうが商店であろうが課税事業者であれば、インボイスは登録しておくことに税金のデメリットは特にありません。
請求書をインボイス制度に則ったものに変える、という事務作業的なデメリットはもちろんあるけど…
インボイスはどうやって作ればいい?
インボイスが必要なのはなんとなくわかったけど、実際どうやって作ればいいか全くわからないよ
手書きでもいいけど、事業を今後も続けていくなら専用ソフトを使って半自動化しちゃった方が絶対に後から楽だよ
インボイスを作成するソフトとしては、必要な記載事項さえ満たされていれば手書きのものでも構いません。
しかし一般的には、
- Excelなどの表計算ソフトを使うか
- インボイス対応の会計ソフトを利用する
のどちらかになるでしょう。
仮にあなたの事業がまだ始めたばかりの段階で、
- 請求書の書式は簡易なもの
- 日々の帳簿もExcelや手書き
- 取引先の数も毎月ほぼ一定
というのであればExcel管理でも十分でしょう。
ただ、今後も事業を拡大する予定がある人やそもそも既に会計ソフトを使っている人は、会計ソフトに付属している書式を利用するのがおすすめです。
会計ソフトの無料オプションでインボイスの請求書も出せるし、「取引先がインボイス登録者かどうか」の管理までできたりするからめちゃくちゃ便利
無料オプションでできるのか
以下の会計ソフトには無料でインボイスが出力できるオプションがついています。
特にMFクラウド会計
会計ソフト導入に対する補助金
さらに、インボイス制度開始に併せて会計ソフトの導入を行う場合、経済産業省の「IT導入補助金」が利用できます。
IT導入補助金は、経済産業省、中小企業庁、中小機構が提供する中小企業向けの制度で、ITツールの導入に関する費用の一部を補助するものです。
「IT導入補助金」を利用して、インボイス制度導入のための会計ソフトを購入する際、最大450万円までの半額分の補助を受けられます。
また、買い切りのソフトではなくクラウド利用のソフトを導入した場合には、最大2年間の利用料が補助の対象となります。
インボイス登録で副業がバレる?
インボイス登録を行うことで、適格請求書発行事業者公表サイトに事業者の個人情報が公表されます。
それによって副業プレイヤーがインボイス登録を検討する時に、会社への「副業バレ」が気になるという方がいらっしゃいますが、
インボイス登録によって副業がバレることはほぼ、ない。
と言って差し支えないでしょう。
インボイス制度で副業がバレることはほぼない
インボイス登録をすると主に以下の情報が世間に公表されます。
- 氏名又は名称
- 登録番号
- 登録年月日、取消年月日、失効年月日
- 事務所の所在地(希望すれば公表されない)
いや、めちゃくちゃバレるじゃん!
大丈夫、検索サイトのシステムでは「名称で検索」というのはできないんだ
適格請求書発行事業者公表サイト上での検索は、「番号検索」のみです。
つまり、氏名や住所で検索する事ができませんので、あなたの個人情報を検索することができるのは、あなたがインボイスを発行した取引先のみということです。
それなら、ほぼバレないの「ほぼ」、とは??
仮に全ての登録事業者のデータをダウンロードして公開鍵を使ってデータを読み取ってCSVファイルの文字検索をする、なんていう暇人がいたらバレないことはない…くらいかな
仮にあなたに副業をしている素振りが全くないとしたら、こんな面倒な事をわざわざする人はほぼいないでしょう。
どちらかと言えば、副業バレは「住民税」から起きるケースの方が圧倒的に多いのです。
副業バレは「住民税」から
住民税は、前年のあなたの所得に対して課されます。
そして現在ほとんどの会社では住民税は「特別徴収」が採用され、給与から天引きされる形になっています。
昔は住民税を自分で納めに行く「普通徴収」の会社も多かったけど、今は国の政策として「特別徴収」が義務化されているよ
市町村から企業へ住民税額の通知が届き、企業が給与計算上でそれぞれの従業員の住民税額を給与額から天引きする方式
会社で給与計算をしていて、この住民税が給与額に対して異常に多い場合に計算処理者は
なんで同じくらいの給与の人に比べてこの人だけ住民税こんなに多いん…?
と疑問を持つことになるでしょう。
これが最もメジャーな副業バレの原因です。
本業と副業の住民税納付方法は分ける
住民税の増加による副業バレを防ぐためには、正しいやり方で確定申告を行う必要があります。
とはいっても仕組みは単純で、申告書上で「給与以外の所得に関する住民税は普通徴収で納付します」と宣言するだけ。
詳しいやり方はこちらの記事を参照してください。
インボイス登録についてよくある質問
この記事に関してよくある質問をいくつか紹介します
まとめ│インボイス登録が必要かどうかは副業の業種による
- インボイスは消費税計算に関わる制度
- インボイス登録事業者になると、自動的に消費税の課税事業者になる
- 副業プレイヤーはいつかはインボイス登録が必要になる可能性が高い
- インボイス登録から副業がバレることはない
ここまでインボイス制度とインボイス登録の必要性についてお話ししてきました。
基本的にメリットがある制度ではありませんが、必ずしもどんな副業プレイヤーにも提出が必須という訳ではありません。
自分の副業形態の顧客がインボイスを求めているかどうか、という点と
「経過措置中にも必要なのか」という点を中心に登録を検討しましょう。
また、インボイス登録をしたとしてもそれが即副業バレにつながるということはありませんので、その点は安心してもらえればと思います。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました