この記事の信頼性
10年以上いろいろなビジネスの財務コンサルタントをしてきた経験から、様々なビジネスの「仕組み」について解説します
本業で税金を扱う専門家が、「ふるさと納税」の仕組みとやり方についてできるだけわかりやすく説明します。
この記事はこんな人におすすめ
- ふるさと納税ってなに?
- ふるさと納税ってとってもめんどくさそう
- 確定申告しないとふるさと納税はできない?
この記事の中にはあなたが見落としている重要なポイントがあるかも。是非最後まで読んでみてね
ふるさと納税の仕組みとは?
ふるさと納税という言葉はどこかで一度は聞いたことがあるけど、実際にどんな仕組みかはわからないという方は多いのではないでしょうか。
この章では、ふるさと納税の以下の項目について一つずつ解説していきます。
自治体に寄付➡返礼品をもらってお得に税金を払う制度
ふるさと納税とは、日本国内の自治体に個人が寄付をできる制度です。
寄付をすると、寄付金の内2,000円を超える金額については限度額の範囲内で、所得税と住民税の控除を受けることができます。
※限度額の計算については後ほど紹介します。
例えば・・
5万円分の寄付をした場合、税金が48,000円分還付(控除)になるので、実質2,000円で5万円分の寄付ができる制度ということです。
寄付を受けた自治体はあなたへの寄付のお礼として「地元の特産品」などの返礼品を送ってくれます。
つまり
自己負担2,000円で自治体を応援しながら地域ごとの返礼品ももらうことができる制度
ということです。
夢のような話だ
本来の趣旨は自治体を応援することなんだけど、現実は返礼品目当てってパターンがほとんどかも
ただし、返礼品制度をそもそも設けていない市町村ももちろんあります。
その場合でも返礼品の有無に関わらず、生まれ育った街を応援する為に寄付をした場合でも税金の還付は受けられるので結局は自己負担は2,000円だけで済みます。
また、寄付をした自治体には
「自分が使った寄付金はこういう目的の為に使ってくれ」
とリクエストも送ることができるので、純粋に応援したい場合は特に使途を指定して寄付するのがおすすめです。
ふるさと納税と還付(控除)の仕組み
ふるさと納税は、シンプルに言うと寄付した金額に応じて住民税が減額される制度です。
本来「住所地に納付する税金」を「自分が指定した自治体へ寄付」という形で渡せる制度と言えるでしょう。
なにもしないと税金、ふるさと納税を使うと寄付、ってことか
まあお金はお金だから出ていく形が税金でも寄付でも君にとっては変わりないんだけど、単純に納める先が違うのは大きいよね
また、そもそもふるさと納税であるかないかに関わらず、
寄付金を支払うことで所得税の計算上において「所得控除」を受けることもできますので、
①所得税の所得控除 + ②住民税の税額控除
の2段階の控除が受けられる制度ということになります。
2重で控除を受けられるなんてめっちゃお得じゃん
控除額はあくまで「寄付金-2,000円」で決まっているから、そこは別にお得じゃないんだよね
あくまでメインは住民税の税額控除で、その前に所得税も一部税金が減るよって感じかな
控除される順番は、あらかじめ決められた課税のタイミングによって、次のようになります。
- 確定申告の時に所得税の税額還付
- 翌年の住民税の課税の時に残りを控除
つまり
- 一部は寄付した翌年の確定申告の時(2月~3月)に還付
- 残りの控除は翌年の住民税の課税時期(6月以降)
ということになります。
住民税は数回に分けて課税されるから、実質来年1年かけて税額控除を受ける、みたいなイメージかな
じゃあ「自己負担2,000円」っていうのは来年払う住民税額の還付まで含めてってことなんだね
「払った寄付金が(2000円を除いて)すぐに還付される」という訳ではないので注意してくださいね。
次の章では限度額計算についてもくわしく解説します。
ふるさと納税のメリットとデメリット
ふるさと納税のメリットとデメリットについても触れておきます。
ふるさと納税のメリット
- 好きな自治体に自分のお金を寄付できる
- 実質自己負担2,000円で各自治体の返礼品がもらえる
ふるさと納税という制度ができるまでは、自分が払う住民税は自動的に住民票を置いている自治体へ納税する形になっていました。
ふるさと納税によって自分の故郷や縁のある土地の発展に寄与できることがメリットの一つ目です。
そして2つ目は返礼品をもらえること。
海産物や牛肉、お米などの食料品から家電製品、雑貨まで様々な品物を実質2,000円でもらえるので、活用しない手はないでしょう。
ふるさと納税のデメリット
- 2,000円は持ち出しになる
- 税金は来年1年かけて返ってくる
デメリットの一つ目はシンプルに2,000円は確実に支出することです。
ざっくりとしたイメージで言うと、「頼んだ返礼品に2,000円の価値があるか」を考えるといいでしょう。
デメリットの二つ目は「実質2,000円で~」とは言うものの、税金が戻ってくるのは来年6月から約1年かかる、ということです。
例えば2万円を寄付した場合、18,000円分税金が安くなりますが、18,000円分の税額控除を受けるのに1年かかります。
これは住民税の課税のタイミングの関係で仕方ないのですが、
手元の現金としてすぐに返ってくるわけではないので、デメリットと言えるでしょう。
長い目で見ればデメリットは2,000円のみってことだな!
まあざっくり言うと来年課税される住民税を前払いする、みたいなイメージだね
ふるさと納税の限度額計算は?
ここまで自己負担2,000円と何度もお話してきましたが、
「いくら寄付しても2,000円を除いて返ってくる」
という訳ではなく、寄付金額について限度額が設けられています。
限度額は年収によって千差万別
限度額計算をする際に基になる数字は、シンプルにあなたの「住民税」です。
住民税は額面の年収ではなくあなたの「所得」に課税されるものです。
会社員と自営業者では元々の計算方法が違うことにも注意しましょう。
会社員のお給料には、「給与所得控除」という所得控除がデフォルトでついてるからね
自営業者はシンプルに売上から経費等を引いたあとの所得に課税されるよね
また、所得を計算するには所得控除についても知識があった方が正確に試算が可能です。
そこまで限度額ギリギリを攻める方は少ないかもしれませんが、こちらの記事で所得控除について解説していますので攻めたい方には参考になるかもしれません。
限度額の計算方法
結論から言うと、以下の式で限度額は計算されます。
?? 住民税とは書いてあるけど意味がよく…?
書いておいてなんだけど、覚える必要はないと思う…
限度額計算についてざっくりと説明すると、
- 所得税の上限額
- 住民税(基本分)の上限額
- 住民税(特例分)の上限額
という3つの上限が順番に設定されており、通常制限となるのは❸のみです。
この❸の上限額を表したものが上の式ですが、正直に言うと計算式を使う必要すらありません。
今では各社がふるさと納税の控除額シミュレーションをサイト上で公開していますので、そちらを使って限度額を求めるのが一番おすすめです。
式を教えてくれた意味…
それはそう。
シミュレーションではあなたの家族構成などが聞かれますが、これは家族構成があなたの「所得控除」に関わってくるからです。
さっきも出てきた「所得控除」
ふるさと納税のやり方は意外に簡単?
ここからは実際にふるさと納税をするための手順についてお話していきます。
まず前提としてふるさと納税の適用を受ける為には、次の二つの方法があります。
- 確定申告の時にふるさと納税をする
- ワンストップ特例制度を使ってふるさと納税をする
ワンストップ特例制度については後ほど説明するとして、まずは一般的な「確定申告でふるさと納税をする方法」についてお話しします。
ふるさと納税の具体的な手順
ふるさと納税をするための手順は以下の通りです。
ふるさと納税専用のサイトから、自治体を選択して寄付をする。
寄付が完了すると自治体から寄付金受領証明書が届くので、保管しておく。
受領証明書を使って寄付金控除を受けられるように確定申告書を作成して提出する。
ふるさと納税専用のサイトってどこを選べばいい?
一応いくつかピックアップしてみたよ
サイト上で寄付をする際の注意点
ふるさと納税専用サイトはナビゲーションも親切ですし、初めての方にもとてもわかりやすい作りです。
実際には「サイト上で商品を選択し、基本情報を入力していく」という手順ですが、その際一点だけ注意点があります。
それは「注文者情報=住民票の情報」としていないケースです。
例えば
- 奥さんが代わりに申請
- 入力名義を奥さん名義でしてしまう
- 寄附金受領証明書が奥さん名義で来る
というケースの場合、仮に世帯主が旦那さんであっても、旦那さんの税金からは控除できないということになります。
申請時の「注文者情報」の登録には注意しましょう。
ふるさと納税でおすすめのサイト
ふるさと納税専用のサイトはいくつかありますが、違いは次の通りです。
- 取り扱っている自治体の数
- 返礼品の掲載数
- キャンペーンの有無
キャンペーンには、寄付をするとギフト券がもらえたり、サイト専用のポイントがもらえたりとお得なサービスを受けられるものがあります。
おすすめのふるさと納税サイト
- マイナビふるさと納税 …寄付額の10%のギフト券がもらえる(2022年中)
- ふるさとチョイス…自治体の取り扱いNo.1
- さとふる …返礼品レビューが豊富
選びたい自治体があればどれでもOKだけど、2022年ならマイナビが一番お得かな
寄付額の10%のギフト券はでかいな
寄付金控除を受ける為の確定申告のやり方
確定申告のやり方がわからない!
という方の為に寄付金控除を受ける為の手続きについてお話しておきましょう。
例として「会社員で、給与所得のみ、住宅ローン控除なしのふるさと納税」の場合を説明します。
準備する資料は以下の通り。
- 寄附金受領証明書
- 給与収入の源泉徴収票
- 本人確認書類(住民票と免許証等)
その場合、確定申告の手順は以下の通りです。
マイナンバーカードが無い場合は、印刷して提出するのが一番簡単です。
選択したら「利用規約へ同意して次へ」をクリック。
作成する年度と申告書の種類を選択します。
給与所得だけの方は「所得税」、自営業の方は「決算書・収支内訳書」を選択します。
給与所得のみなので、「所得税」を選択するよ
画面の指示に従って以下の情報を入力していきます。
- 生年月日
- 源泉徴収票の枚数
- 年末調整が済んでいるか
- 適用する所得控除
- 年末調整済の場合、新たに追加する所得控除はあるか
- 予定納税の有無(事業収入が無ければ無し)
予め準備しておいた源泉徴収票を転記するだけなので、そこまで難しいことはありません。
ただ、年末調整がしてあるものかどうかは事前に確認を忘れずに。
給与所得のみの場合、ここは転記した内容の確認だけでOK。
ここで「寄付金控除」の入力を行います。
準備した受領証明書を元に、全ての寄付金について情報を入力しましょう。
何も入力せず、「次へ」でOK。
※住宅ローン控除がある場合はここで入力を行います。
入力した内容に間違いがないかを確認します。
16歳未満の扶養親族等がいる場合は「該当する」をクリック。
基本情報を入力するだけですが、住所を管轄する税務署名は調べる必要があるかもしれません。
お疲れ様でした。
ここまで入力が終わったら必要な申告書を選んで帳票をダウンロードするだけです。
- 申告書B第一表
- 申告書B第二表
- 添付書類台紙
全て「提出用」と「控え用」を印刷します。
ダウンロードした申告書のPDFを印刷後、本人確認書類の写しと一緒に郵送すれば完了です。
- マイナンバーカード(両面)
もしくは
- 住民票か通知カード
- 免許証、パスポート等
❶と❷からそれぞれ一つずつ
ちなみに、控え用の申告書と返送用封筒(+切手)を同封すれば、控えを返送してもらえるので念のため控え用も送っておくのがおすすめです。
難しくはないけどけっこう大変だ
ただこれは一番簡単なパターンだからね・・
確定申告についてはこちらの記事で詳しく解説していますので他に事業所得がある方などは参照してくださいね。
寄付先が5か所以内だと確定申告なしで申請可能
確定申告以外でふるさと納税する方法はないの?
さっき少し出てきた「ワンストップ特例制度」があるよ
確定申告を行わずにふるさと納税の申請を受ける方法があります。
それが「ワンストップ特例制度」です。
ただし、次のような要件に該当する方のみです。
- ふるさと納税以外の確定申告が不要な給与所得者の方
- 1年間でふるさと納税の寄附先が5か所以内である方
次の章で詳しくやり方を解説していきますね。
ワンストップでふるさと納税をするやり方
ワンストップ特例制度は、確定申告をせずに税額控除が受けられます。
ですので、会社員など普段確定申告に馴染みがない方でも簡単にふるさと納税ができる貴重な特例と言えます。
また、申請に必要な「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」は以下の3つの方法で入手可能です。
- 寄付者の必要情報を転記した申請書をマイページからダウンロード
- 寄付時に申請書の送付を申し込む
- 総務省のサイトからダウンロード
寄付時に申し込む、とは
ふるさと納税用のサイトから寄付をする時に、申し込みフォームにある「自治体からのワンストップ特例申請書の送付」を「希望する」ことで入手できます。
寄付時に忘れても総務省のサイトからダウンロードできるから大丈夫だよ
ワンストップ特例制度の申請手順
では実際のワンストップ特例制度を申請する為の手順を見ていきましょう。
- 寄付をする
- 寄付をした自治体に申請書を提出する
おわり?
2.の「申請書を提出する」、が確定申告の代わりになるよ
確定申告と同様の扱いになるので、申請書を提出する時には本人確認書類の写しの添付が必要です。
- マイナンバーカード(両面)
もしくは
- 住民票か通知カード
- 免許証、パスポート等
❶と❷からそれぞれ一つずつ
自治体へ申請書を提出することで、寄付を受けた自治体から住所地の自治体へ税額控除の通知が届きます。
住所地は受け取った税額控除を元に、来年のあなたの住民税を決定します。
その場合、所得税の還付はどうなるの?
いい質問。税務署を通さないから所得税の還付はなし、全額住民税からの控除になるよ
ワンストップ特例制度の申請書の書き方
ワンストップ特例制度の申請に使用する「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」の書き方を説明します。
まずはこちらをご覧ください。
じ、字がいっぱい・・
聞かれていることはめっちゃ単純だよ
申請書は上から大きく3つのブロックに分かれています。
- 基本情報
- 1.当団体に対する寄附に関する事項
- 2.申告の特例の適用に関する事項
一つずつ説明します。
基本情報
記載する情報
- 提出年月日
- 寄付をした自治体の長(〇〇町長など)
- 住所
- 電話番号
- 氏名
- 生年月日
- マイナンバー
1.当団体に対する寄附に関する事項
記載する情報
- 寄付をした年月日
- 寄付金額
2.申告の特例の適用に関する事項
ここは記入するところはなく、以下の二つの欄にチェックするだけでOKです。
チェックする情報
- もともと確定申告不要の給与所得者であること
- 5か所を超える寄付先に寄付はしていないこと
さっきも出てきた前提条件を確認しているだけだね
副業で年間20万円以上の利益がでている場合は使えないってことだね
確定申告について詳しくはこちら
ワンストップ特例制度の注意点
ワンストップ特例制度は便利な制度ですが、いくつか注意点もあります。
3つの注意点
- 申請書は寄付の度に提出する必要がある(同自治体への寄付でも)
- 確定申告ではないので、医療費控除などは受けられない
本人確認書類まで都度送るのは結構面倒だなあ… あっ!
同じ自治体に2回寄付しても「5か所以内」のカウントには影響しないよね?
それは大丈夫だよ
ふるさと納税についてのよくある質問
最後に、ふるさと納税についてよくある質問を紹介します。
サラリーマンでも申請できる?
できます。
むしろサラリーマンこそ利用するのがおすすめな制度です。
ふるさと納税の期限はいつまで?
1年間ごとの計算なので12月31日までです。
1月1日以降は来年のふるさと納税の扱いになります。
年末調整でもできる?
できません。
年末調整は所得税を清算する仕組みで、ふるさと納税は主に住民税を減額する制度です。
なんか返礼品お店の値段より高くない?
2019年の制度改正により、返礼品は寄付額の3割までというルールが厳格化されました。
そもそもふるさと納税の本来の趣旨は自治体を応援することなので、返礼品はあくまで気持ち程度の「オマケ」という扱いになっています。
ですので、本来の商品の価値と寄付額は一致しまいように設定されています。
寄付額の3割を明らかに超える返礼品は、控除対象外になっちゃうんだよね
自治体がガメつい訳じゃなかったんだ
寄付の度に2000円の自己負担がかかるの?
年間の寄付金合計に対して2,000円なので、何か所に寄付をしても自己負担は2,000円でOKです。
ふるさと納税についてよくある質問
この記事に関してよくある質問をいくつか紹介します
この記事のまとめ
ここまでのおさらい
- ふるさと納税は特定の自治体を選んで応援できる制度
- ふるさと納税の対象となる寄付には限度額がある
- 申請の前に限度額の試算を忘れずに
- ふるさと納税は専用サイトからするのが一番確実
- ふるさと納税の適用を受けるには確定申告、もしくはワンストップ特例制度を利用する
ふるさと納税の仕組みや限度額の試算、確定申告のやり方まで解説してきました。
面倒なイメージが先行してあまり取り組む方がいない制度になってしまっていますが、実際に一度やればその簡単さとお得さが実感できることと思います・・・!
ふるさと納税を上手に利用して、お得に返礼品をゲットしましょう!(故郷を応援しましょう)
カッコ書きの方が本来の主旨ね