この記事の信頼性
10年以上いろいろなビジネスの財務コンサルタントをしてきた経験から、様々なビジネスの「仕組み」について解説します
これから何かしらの事業を副業で始めたいと思っている方の中には、
副業を始める時の行政手続きって何をしたらいいの?
という不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
始めたい副業の種類によって準備が必要なものは異なりますが、共通して「やっておかなければいけない手続き」というものは存在します。
この記事では、副業をこれから始める方にむけて必要な手続きについてご紹介します。
聞く前から難しそうなイメージ…
イメージだけで全然難しくないと思うよ
「事業主」になった時の税務署への提出書類
開業時に必ずやっておくべき行政手続きは税務署への書類の提出です。
理由は、無駄な税金を払わなくてよくする為です。
ここでは事業を始めた時に必ず提出する書類について紹介します。
どんな事業形態を選んだとしても以下の書類については必ず提出しておきましょう。
- 開業届
- 青色申告承認申請書
開業届を提出する
開業届はその名の通り開業したことを所轄の税務署へ申告する届出です。
原則として開業から1カ月以内に提出する必要があります。
ただ個人開業の場合、厳密にここから開業したと言える日が曖昧な場合もあると思います。
そこまで厳密に1か月以内じゃなければいけない!と考える必要はありませんが、開業日が含まれる年内には提出するようにしましょう。
また、仮に提出していない場合でも特に罰則などはありませんが、開業届の提出は後ほど紹介する「青色申告承認申請書」の提出要件なので1か月以内でなくても忘れずに提出しましょう。
お得に税金を申告するコツは、この「青色申告承認申請書」の方だよ
開業届を出すメリット
開業届を出すメリットは、以下の通りです。
- 青色申告承認申請書を提出できる
- 対外的な信用があがる
青色申告のメリットについては後述します。
「対外的な信用が上がる」とは、具体的には
- 事業用の銀行口座が作れたり
- 借入ができたり
- 法人カードが作れたり
- テナントを借りられたり
といったことです。
それぞれ開業届を提出していれば確実にできるということではありません。
事業内容や計画書の内容によったりと条件はありますが、開業届を提出していることが前提条件です。
これらを将来的に計画しているのであれば開業届の提出は必須でしょう。
特に事業用口座と事業用クレジットカードを持っておくのは絶対におすすめ。詳しくは以下の記事を見てね
開業届はどこでもらえる?
どこの税務署にも「開業届」の書式が備え付けられているので窓口職員の方に尋ねれば案内してもらえます。
または、国税庁のホームページでもダウンロードできるので印刷可能な方はその方が早いでしょう。
しかもダウンロードできるだけでなく直接入力が可能なので、手書きするのが面倒な人にもおすすめです。
開業届の書き方
開業届に記載する項目は以下の通りです。
- 所轄税務署名
- 納税地(住民票の住所)
- 名前、生年月日、マイナンバー
- 職業
- 届出の区分
- 所得の種類
- 開業日
- 開業に伴う届出書の提出の有無
- 事業の概要
- 給与等の支払状況
1.所轄税務署名
もし所轄の税務署がわからない場合は、国税庁のHPで調べることができます。
2.納税地・住所
納税地は一般的には住所地(=住民票が置かれた住所)ですが、既にオフィスを借りている場合などは事業所を選択してもOKです。それぞれの「住所」と「電話番号」を記入します。
住所地 | 住民票の住所 |
居所地 | 住民票の住所地ではない一時的に住んでいる場所 |
事業所 | 事務所や事業所が別にある場合その場所 |
オフィスはいつまで借りているかもわからないし、普通に住所地でいいと思うよ
3.名前・生年月日・マイナンバー
そのままです。氏名、生年月日、マイナンバーを記載しましょう。
4.職業
「職業」は会社員でもいいですし、これから行う業種名でも大丈夫です。また事業の「屋号」決まっている場合は記載しましょう。ない場合は空欄でOKです。
5.届出の区分
「開業」を選択し、「所得の種類」は「事業所得」でOKです。(不動産投資の場合は「不動産所得」を選択)
6.開業日
開業日を記入します。多少曖昧でもこの日と決めればそれでOK。
7.開業に伴う届出書の提出の有無
①「青色申告承認申請書」と消費税の②「課税事業者届出書」を同時に提出するかどうかを記入します。
特に理由がなければ①のみ「有」でOKです。
8.事業の概要
事業内容を簡単に記入します。
ブログだったらWEB広告代行業、物販だったら「〇〇商品などのネットショップ運営」など。
あまり細かく考えてなくても大丈夫です。
9.給与等の支払の状況
従業員へ給料を支払う予定がある場合は人数を記入します。
- 「専従者」…青色事業専従者がいる場合
- 「使用人」…それ以外の従業員がいる場合
税額の有無とは、給与から源泉所得税を天引きする職員がいるかどうかということです。
実務的には、給与の月額が8万8,000円以上の場合は「有」を選択します。
結構書くことあるなあ
届出書はあくまで「届出」で申請じゃないから、基本情報以外はあまり難しく考えてなくてもOKだよ
開業届の提出方法
開業届の提出の仕方は主に2つ方法があります。
- 税務署窓口へ持ち込む
- 郵送提出
その他に電子提出なども可能ですが、余計に手間がかかるので窓口か郵送がおすすめです。
また提出時には、次の1│もしくは2│の本人確認書類の添付が必要です。
本人確認書類
- マイナンバーカード
- マイナンバーが書かれた住民票+免許証など
郵送の場合は、開業届書2部(提出用、控え用)と上記のいずれかの本人確認書類の写し、それと切手を貼った返信用封筒を同封して税務署に送りましょう。
控え用に受領印が押された控えの届出書を返送してもらえます。
副業を始めても開業届を出さなくていいケース
副業を始めた場合でも、一部開業届を提出しなくてもいいケースがあります。
それはどういった時かと言えば、シンプルに副業が「事業」とみなされない場合です。
税務上の「事業」とは
資産の譲渡などにより対価を得る経済活動で、継続的に行われるもの
つまり、以下のような形態の副業は「事業」とはみなされません。
- 不用品をメルカリでたまたま処分した
- 年に数回YouTube動画を投稿し、数千円の利益が出た
- ハンドメイドのアクセサリーを年に数回不定期で販売している
年に数回なら一時的な取引という扱いなんだね
まあ実際はこれらのケースでも金額があまりにも多ければ事業扱いできることもあるけどね
開業届は「事業」を始めた時に提出する書類です。
反対に言えば、「事業」を始めていなければ提出する必要がありません。
先ほど出てきた「青色申告承認申請書」も副業が「事業」でなければ申請することができません。
結局出さなくていいケースはあるけど、できれば出せた方がお得ってこと??
その通り。紙1枚出すだけだし、できれば出せるような形の事業にするべきだよ
個人事業税の事業開始等申告書
「開業届」の提出先は所轄税務署であり国ですが、実は個人事業主の「開業届」の書類は次の通り3種類あります。
- 税務署「個人事業の開業・廃業等届出書」
- 都道府県「個人事業税の事業開始等申告書」
- 市区町村「個人事業開始申告書」
❶と❷には提出義務がありますが、実務的には❶の提出だけで済ますケースが多いです。
ほぼ書く項目は変わりないので、気になる方は❷も❶と同じタイミングで提出しておいてもいいでしょう。
ただし提出先は都道府県の都道府県税事務所です。
❸は各市区町村によって書類の名前が違ったり書式自体がない場合もあります。
提出義務もないのでこだわりがなければスルーでOKです。
青色申告承認申請書を提出する
所得税の確定申告にあたっては、青色申告と白色申告の2つの申告制度がありいずれかを選択することになります。
- 青色申告…複式簿記によって帳簿書類を作成し、正確な申告を行う。
- 白色申告…単式簿記によって簡易な帳簿書類を作成し、申告を行う。
青色申告承認申請書とは、その名の通り「青色申告」を選択し、税金面で有利な条件によって税金申告をするための届出です。
提出期限は開業日から2ヵ月以内になっています。
開業届と同じく税務署に提出する書類なので、一緒に提出するのがいいでしょう。
青色申告承認申請書を提出するメリット
青色申告を行うことによるメリットは以下の通りです。
- 青色申告特別控除額として最大55万円を所得から控除できる
→確定申告書をe-Taxを利用して電子送信する場合最大65万円控除 - 家族を従業員として雇っている場合「青色事業専従者給与」として給与を経費に計上できる
- 事業の赤字による損失額を3年間に渡って繰り越すことができる
逆に白色申告だと家族に給料払えないのか
帳簿がきちんと整備されていないとお小遣いなのか給料なのかも判別しずらいからね
最大55万円(電子申告の場合65万円)の控除は節税という面で考えるとかなり大きなメリットでしょう。
複式簿記を簡単に行える会計ソフトも無料のものもありますし、有料でも今は安価に利用できるので、青色申告がおすすめです。
ちなみに確定申告の面倒さをなくすなら、圧倒的に有料ソフトの方がおすすめ
青色申告承認申請書はどこでもらえる?
開業届と同じくどこの税務署にもの書式が備え付けられているので窓口職員の方に尋ねれば案内してもらえます。
または、国税庁のホームページでもダウンロードできるので印刷可能な方はその方が早いでしょう。
しかもダウンロードできるだけでなく直接入力が可能なので、手書きするのが面倒な人にもおすすめです。
青色申告承認申請書の書き方
基本情報などの記載項目は先ほどの開業届とほぼ同じです。
ここでは「青色申告承認申請書」独自の記載項目についてのみ解説します。
- 所得税の申告年
- 事業所又は所得の基因となる資産の名称及びその所在地
- 所得の種類
- いままでに青色申告承認の取消しを受けたこと又は取りやめをしたことの有無
- 本年1月16日以降、新たに業務を開始した場合、その開始した年月日
- 相続による事業継続の有無
- その他参考事項
1.所得税の申告年
青色申告を開始する年を記入します。
2.事業所又は所得の基因となる資産の名称及びその所在地
「名称」には屋号名や事業所名もしくは業種名を書き、所在地には事業所か住所地の住所を記載します。
事業所がもし複数あれば全て記載しましょう。
書ききれなければ白紙のコピー用紙に手書きでOKです。
3.所得の種類
「所得の種類」は「事業所得」でOKです。(不動産投資の場合は「不動産所得」を選択)
4.いままでに青色申告承認の取消しを受けたこと又は取りやめをしたことの有無
通常は(2)無を選択しますが、もしこれまで取り消されたことがある場合、1年間は申請が却下されます。
5.本年1月16日以降、新たに業務を開始した場合、その開始した年月日
開業日を記載します。
1月15日以前に開業した場合は3月15日までに提出が必要です。
6.相続による事業継続の有無
通常は(2)無が多いと思いますが、もし相続による事業の承継があった場合には(1)を選択し、相続開始年月日を記入します。
7.その他参考事項
簿記方式と備え付ける帳簿書類を記載します。
通常は事業所得であれば「複式簿記」(控除額55万円)を選択します。
不動産所得で事業規模は小さい場合は「簡易簿記」(控除額10万円)を選択します。
帳簿書類は実際に備え付ける書類ですが、最低限「現金出納帳、預金出納帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、総勘定元帳、仕訳帳」などは〇で囲んでおきましょう。
一番下の関与税理士のところは、もし顧問税理士がいればその名称を書いておこう
僕は自分で申告する予定だから空欄かな
青色申告で保存する帳簿書類
また、青色申告では複式簿記による記帳と同時に、事業に関する帳簿を備え付けることが義務付けられているので、以下の書類は最低限準備しておきましょう。
- 現金出納帳
- 事業用通帳
- 請求書等
- 領収書類
- 契約書等
現在は白色申告でも一定の帳簿書類の備え付けが要件になっていますが、青色申告の方が税務署は細かく帳簿が揃っているかを見るので、きちんとファイリングして整理しておく必要があります。
白色申告なら事務負担は軽い?
結論から言うと、現行の制度ではそこまで変わりません。
平成25年以前は白色申告で収入金額300万円までの事業者は記帳や帳簿の保存義務などがありませんでした。
その為事務負担は軽かったと言えますが、平成26年度からは事業所得などがある全ての事業者に記帳と帳簿保存が義務付けられています。
単式簿記と複式簿記の違いがあり記帳作業に最初は少し戸惑うかもしれませんが、いずれにしても記帳が必要なのであれば
事務負担の軽減<青色申告の税務メリット
になっていると言えるでしょう。
年間収入300万円以下の事業は「雑所得」?
ここまで青色申告承認申請書について解説をしてきました。
しかし、2022年1月より「年間300万円以下の収入金額である事業は「事業所得」ではなく「雑所得」である」という内容が所得税基本通達に明記されることになりました。
どういうことなの。
「雑所得」には青色申告という制度がないんだ
これは、開業時に青色申告承認申請書を提出していたとしても扱いは変わりません。
年間の収入が300万円以下となってしまった場合はあなたの事業は原則「雑所得」とみなされ、青色申告特別控除の適用が受けられなくなるので注意が必要です。
横暴すぎじゃない…?
そうだね。実際この通達だ出せれてから、もの凄い数の不平不満が寄せられたんだよ
基本通達改正案の修正
今回の所得税基本通達については、内容に疑問を呈する何千件ものパブリックコメントが寄せられました。
その結果、「収入金額が300万円を超えない」という文言は削除されることになりましたが、一方で事業所得とするためには「帳簿書類の保存」が条件として新たに付け加えられることになりました。
ただし、そもそも青色申告を行う為には帳簿付けが必須条件ではあったので、実質的には条件の緩和だと考えることもできるでしょう。
なんか交換条件みたい
実際そうだよね。ただ、有無を言わさず小規模事業は雑所得!になることに比べたら十分緩和されているとも考えられるね
開業手続きについてよくある質問
この記事に関してよくある質問をいくつか紹介します
この記事のまとめ
- 税法上の事業とは、資産の譲渡などの経済活動を継続的に行うもの
- 事業を始める時には開業届を提出しよう
- 開業届を提出する場合には、青色申告承認申請書の提出も同時に行おう
- 年間収入300万円以下の事業は原則「雑所得」に分類される
ここまで副業で事業を始める場合の提出書類について解説してきました。
提出期限内に必要な書類を漏れなく提出し、できるだけ節税できる形で副業を始めましょう。
行政手続きと合わせて副業の開始前に必要なモノについてもこちらの記事で解説していますので是非ご覧ください。