副業をこれから始めようと思う方の中には、
人を増やすときって雇うのがいいの?外注にするのがいいの?
こういった悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。
事業を拡大する為にスタッフを集める際に、雇用するのか業務委託とするのかは事業主にとって重要なテーマです。
それぞれにメリットデメリットがありますが、見落としがちな面も意外に見受けられるテーマでもあります。
そこでこの記事では雇用と業務委託それぞれの概要とメリットとデメリットについて紹介していきます。
この記事の信頼性
10年以上いろいろなビジネスの財務コンサルタントをしてきた経験から、様々なビジネスの「仕組み」について解説します
雇用契約とは
雇用契約は、労働者と雇用する側の間で行われる契約のことです。
労働者は雇用する側に働き、雇用する側はその働きに対してお金を支払うと約束します。
雇用契約を結んだ場合、労働者は労働保険や社会保険に加入したり、有給休暇を取ったりすることができます。
雇用契約は必ずしも書面で作成する必要はありませんが、トラブルが起きる可能性があるため、アルバイトでも雇用契約書を作成し、労働法を守ることが大切です。
業務委託契約とは
業務委託契約は、会社などが自分たちで対応できない業務を他の会社や個人に依頼する契約です。
法律上は業務委託契約という名前の法律はありませんが、民法の中にある「請負契約」と「委任契約」という契約が関連するとされています。
①請負契約とは
発注者が依頼した仕事を完成させるための契約です。
受託者は仕事を完成させる義務があり、完成した仕事を納品すると報酬が支払われます。
ただし、発注者の要求通りの結果や成果物が得られない場合は、報酬を請求することはできません。
②委任契約とは
法律行為の委託や事実行為(事務処理)の委託をする契約です。
法律行為とは、代理人契約などの契約を締結するための意思表示のことで、事実行為は書類作業や開発業務など、さまざまな業務を指します。
委任契約では、仕事の過程ではなく結果や成果を求められるため、発注者の要求に沿わない結果でも報酬を請求することができます。
雇用契約と業務委託契約の違い
雇用契約と業務委託契約の大きな違いは、「使用従属性」という点です。
使用従属性がある場合は雇用契約であり、ない場合は業務委託契約と言えます。
雇用契約を結ぶと、働く人は「労働者」となり、雇用主からの命令や指示に一定の拘束力が生じます。
一方、業務委託契約は、特定の仕事を行った個人や事業者に依頼主が報酬を支払う形態の契約です。
業務委託契約では、雇用主と労働者という「使用従属性」の関係は存在しません。
契約は2つの独立した個人や事業者の間で行われます。そのため、業務委託契約では労働基準法などの法的な保護を受けることはできません。
労働法上の保護
- 雇用保険、健康保険、労災保険、厚生年金保険などの社会保険制度を利用できる
- 年次有給休暇を取得することができる
- 労働基準法に基づいて残業代を請求することができる
雇用か業務委託の区分の判断は総合的に行われますが、具体例としては、以下のようなポイントで使用従属性が認められるかどうかを判断します。
- 仕事の依頼や業務に対する指示に対して自由があるかどうか
- 業務内容や遂行方法に対する指揮命令があるかどうか
- 勤務場所や勤務時間に拘束があるかどうか
- 代替の労働力が存在するかどうか
- 報酬の基準が成果物の完成や時間に基づいているか
- 報酬が他の正規従業員よりも著しく高いかどうか
- 機械や原材料などの負担が会社側にあるかどうか
- 事業への専属性が高いかどうか
たとえば、勤務場所や勤務時間が決まっていて、指揮命令に従わなければならない場合は使用従属性があり、雇用契約と判断されます。
また、就業規則や福利厚生制度が適用され、働いたことに対して報酬が支払われる場合も雇用契約となります。
雇用契約と業務委託契約のメリットとデメリット
雇用契約と業務委託契約にはそれぞれいい点と悪い点があります。
大別すると「税金面」と「経営面」での影響が大きいと言えるでしょう。
1.税金面でのメリットとデメリット
雇用か業務委託か、それぞれの契約によって会社の経理の処理方法が異なります。
具体的には、雇用契約・労働契約では「給与」として処理され、請負契約や業務委託契約では「外注費」として処理されます。
そして「給与」は消費税の対象外ですが、「外注費」は消費税の課税対象になります。
これによって何が変わるかと言うと、事業主が払う消費税額が変わります。
外注費は消費税法上の経費として計算できるので、会社が従業員を個人事業主として雇う「従業員の外注化」を行うと、消費税を節税できるのです。
つまり消費税の面だけで考えれば、業務委託契約の方が明確に有利という判断ができるということです。
ただし問題なのは、税務署の調査が入った場合に”業務委託契約が本当に業務委託契約かどうか”が問題になることがありということです。
どういうこと
依頼する業務内容によって、「それは雇用です」と判断されるケースがあるんだよ
業務委託契約が雇用契約と判断される場合
仮に業務委託契約書を交わして外注費として経理処理をしていたとしても、契約内容によって「使用従属性」という要素が認められ、雇用契約とみなされることがあります。
また、雇用契約と業務委託契約は同時に結ぶことができます。
例えば、アルバイトや契約社員の人が収入を増やすために、業務時間外に会社の仕事を請け負う場合など、雇用契約と業務委託契約を同時に結ぶことがよくあります。
ただし、注意しなければならない点は、業務委託契約が「雇用の延長」とみなされないように、雇用契約の部分と業務委託の部分を切り離すことが重要です。
雇用契約では時間に基づいて報酬が支払われる一方、業務委託契約では業務の内容や成果物に基づいて報酬が支払われるため、注意が必要です。
2.経営面でのメリットとデメリット
税制上は業務委託契約が有利というお話をしてきましたが、それではみんな業務委託とすべきかと言うともちろんそんなことはありません。
事業の運営上では雇用契約にもメリットがありますし、一概に業務委託が有利とは言い切れません。
それぞれのメリット、デメリットを見ていきましょう。
雇用する場合
メリット
- 組織の一体感と協調性の向上
-
雇用により、スタッフは会社の一員として共通の目標に向かって協力し合うことができます。
チームワークや組織文化の形成に貢献します。
- 柔軟な勤務時間と業務内容の調整
-
雇用契約に基づいて、スタッフの勤務時間や業務内容を調整することができます。
フルタイムやパートタイムなど、ニーズに合わせた雇用形態を選択できます。
- 労働条件や福利厚生の提供
-
雇用関係では労働法に基づく保護があり、最低賃金、労働時間、休暇などの労働条件が定められます。
また、給与や社会保険、退職金などの福利厚生を提供することで、スタッフのモチベーションや忠誠心を高めることができます。
デメリット
- 人事管理や労働契約の手続きに関わる負担
-
雇用するには、採用プロセス、労働契約の作成、給与の管理など、人事管理に関連する手続きが必要です。
時間とリソースを要する場合があります。
- 労働法や労働組合との責任の発生
-
雇用主としては、労働法や労働組合との関係において特定の規制や責任を負う必要があります。
労働条件や労働者の権利についての法的な義務を遵守する必要があります。
- 給与や労働コストの経済的負担
-
スタッフの給与や社会保険料などの労働コストは、事業にとって経済的な負担となります。
経営予算においてこれらの費用を考慮する必要があります。
業務委託する場合
メリット
- 専門業者の迅速な活用
-
業務委託をすることで、特定のスキルや知識を持った専門業者を素早く利用できます。
高品質な業務の提供や効率の向上が期待できます。
- 業務内容と納期の明確化
-
業務委託契約により、具体的な業務内容や納期を明確に定めることができます。
双方の期待や要件を明確化することで、業務遂行の効率化が図れます。
- 柔軟性とコスト効率の向上
-
業務委託により、雇用関係に伴う人事管理や給与などのコストを削減できます。
特定の業務に必要な期間だけ外部の専門家を利用することで、柔軟性とコスト効率を向上させることができます。
デメリット
- 一体感や忠誠心の低下
-
業務委託契約は一時的な契約関係であるため、スタッフとの一体感や忠誠心が雇用に比べて低くなる可能性があります。
コミュニケーションや組織文化の形成には工夫が必要です。
- 代替業者探しの手間とコスト
-
委託先が業務を遂行できなくなった場合、代替の業者を探す手間や追加のコストが発生する可能性があります。
業務の継続性を確保するためにリスク管理が必要です。
- 税務処理や契約内容への注意
-
業務委託による支出は経費として認められる場合がありますが、適切な税務処理が必要です。
また、契約内容や細かい条件を明確にし、業務委託契約書を適切に作成することが重要です。
それぞれのメリットとデメリットを加味した上で、自分の事業にあった契約形態を選びましょう。
よくある質問
この記事に関してよくある質問をいくつか紹介します
まとめ
ここまで雇用契約とはどういうものか、業務委託契約にはどんなよい点があるか、などについてお話してきました。
どの業種のどんな業態にも通ずる正解はありませんが、それぞれの事業にとって適した契約形態というものは存在します。
自分の事業にとって優先すべきポイントがどこなのかを分析し、それぞれの契約形態の最大のメリットをとれる契約はどちらなのかを検討しましょう。